CYCLE/CONNECT/CITY(サイクル・コネクト・シティ)。いよいよ始動した2010年のX2 TOKYOは、自転車と都市を「つなぐ」ことが最大のテーマ。そこでこれから、東京が見習うべき世界中の「自転車都市」のレポートを定期的にお届けしていく。
我々が最初のレポート対象として選んだ都市は、意外にも日本の富山市。自転車の成功事例として、一度は耳にしたことがあるであろうパリのVerib(ヴェリブ)というレンタサイクルシステム。そのVeribのシステムを今年3月、ヨーロッパ以外ではじめて導入した都市が、この富山市なのだ。そもそも、なぜ富山市なのか? そのストーリーは富山市が掲げる「コンパクトな街づくり」という現市長が掲げた崇高なコンセプトからはじまる。
「コミュニティサイクルが運用されはじめた3月下旬から約1か月で、すでに30件以上の自治体、NPO等の視察がありました。今日もこれから、とある地方自治体が視察にいらっしゃる予定なんですよ」
富山市役所環境部の相山さんは、誇らしげに、でも淡々と説明していく。コミュニティサイクル導入以前に、もともと富山市が抱えていた問題は、中心市街地の活力の低下→市郊外部への人口流出→自動車依存による環境負荷増という悪循環に陥っていたこと。全国県庁所在地の中でも、中心市街地の人口密度はワーストワンというから、その問題はどこよりも深刻だった。そんな富山市に大きな転換点が訪れるたのは2002年。現職の森・富山市長が就任してからだ。彼が打ち出した政策は「コンパクトな街づくり=コンパクトシティ」。中心市街地の公共交通機関を基軸に環境配慮型のモデル都市を作る、という大胆な構想であった。
「しかし、いくら環境に良いからと煽っても、市民の行動パターンは変わらないんですね。そこで、とにかく中心市街地にあるインフラの質を上げることで利用率を上げ、同時に利便性が上がるようにしました」市内中心部を走っていたトラムは、その運営会社を従来のJRから市が買い上げる形で第3セクター化。それを機に、ここはヨーロッパか? と見間違うような最新型のトラム3台を導入し、且つ新たにレールを敷設することにより環状線化。便数も増やし、サービス向上と同時に都市景観をも改善した。また、その方針に伴って、散在していた公共施設を中心市街地に移設したり、中心部や公共交通機関沿線に住めるよう補助金制度も用意するという徹底ぶりで、まさしくコンパクトに集約された効率的な街づくりが順調に進んでいるように見える。
「富山市が挑んだのは、これまでの都市構造自体を変化させ、それによって市民のライフスタイルを変化させるということ。あらゆる側面で効果はすでに出始めていますが、この計画は2050年までの長期スパンで考えられているんですよ」
そんな富山市が次に自転車に活路を見いだしたのもごく自然な流れ。もっとも環境負荷がかかると思われた「近距離のクルマ利用」の代わりに、ゼロエミッションの自転車を市の交通網に組み込むことで、CO2の削減と中心市街地の活性化を図るという役割だ。さらに高齢化の中で将来自動車に乗れなくなるであろう市民の移動手段を確保するという目的もあったようだ。
「富山市が目指したコミュニティサイクルは、とにかく日本では法令上前例の無いことばかりだったので、国土交通省、県の土木部、警察など、理解と協力を得るためのあらゆる折衝が1年以上続きました」富山で実現したコミュニティサイクルは、仕組みもスタイルも日本のどの自治体でも成し得なかった領域に踏み込んでいる。それは市民による税金負担を極端に減らした導入例としても、どこよりもあたらしく、スマートだ。来週は、富山市がレンタサイクルシステムを導入するために重要な役割を果たした運営会社への取材も織り交ぜながら、実際にサービスを利用してみたレポートもお知らせします。
(text X2 Tokyo Project, photos Shingo Fujimoto)
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