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ついに日本上陸!!
ヴェリブ型レンタサイクルは
革命を起こすか? 後編

2010.05.07 CYCLE/CONNECT/CITY
前回レポートした富山市の事例は、単に行政が実施運営するレンタサイクルシステムと思われる方も多いのではないだろうか? これまで実施されてきた日本の幾つかのレンタサイクル事例は前述のスキームが主なものだが、富山市はそのアプローチからして180度違うと言ったら、果して適切だろうか? 日本で初めてのヴェリブ型レンタサイクルは、そのビジネス的枠組みもヨーロッパのそれをしっかりと踏襲しているのだ。では、ここで今回の事業実現に尽力した運営会社、シクロシティ株式会社の猪爪さんに、今回の富山の「バイクシェアリング」と呼ばれるビジネス的枠組みと、利用方法、今後の展望について語っていただこうと思う。

フランスで蓄積したノウハウを活用。

前編でお伝えした通り、富山市が掲げる「コンパクトな街づくり=コンパクトシティ」構想の中で、ある意味象徴的な役割も果たすコミュニティサイクル。では、なぜ今このビジネスがそれほど注目されているのか? まずは、その枠組みから猪爪さんに説明してもらう。
「我々が『バイクシェアリング』と呼んでいるこの富山のシステムは、行政と我々事業者、そして市民とのトライアングルによって成立しています。まず、導入から運営までの全てを市が税金を使って賄うのではなく、民間会社であるシクロシティ株式会社が事業を運営し、その費用を負担しています。我々の収入源は、自転車の利用料に加えて、今回設置したステーション、自転車、そして市政情報パネルへ掲出する広告の収入があります。広告料収入を加えることで、充実したサービスを提供することができ、またサービスの利用料を安価に抑えることが可能です。市政情報パネルには、車道側には広告を掲出しますが、歩道側には市民や観光客にとって便利な周辺案内地図を掲出していますので、サービスを利用しない方にとってもメリットがあります」
このスキームは、シクロシティ株式会社の親会社JCDecaux社(フランス)が、ヨーロッパの64都市で手がけてきているスタイルとほぼ同様のもの。日本では珍しいこれらの手法でも、実績やノウハウはお手のものだ。ちなみに、今回の施設を導入するために必要となった初期投資1億5000万円は、環境省(国)が90%、富山市が10%を補助することで実現したそうだ。

質実剛健な印象のレンタサイクル用自転車
質実剛健な印象のレンタサイクル用自転車。実際にヨーロッパで使用されている仕様とほぼ同等モデル。ちなみに、フロントトレイに駐輪用のワイヤーロックも付属する。
ラック部分にあるカードリーダー
ラック部分にあるカードリーダー。ここにICカードをかざすだけで、自転車がリリースされるという簡単な手順がとても魅力だ。

ICカードとコード入力で24時間いつでもすぐ乗れる!

取材時点で3月末の導入から約1か月。市民の利用実績はどうだろうか?
「登録者が約600人。今回の富山市のケースは設置が150台ですから、上々の滑り出しと言えるでしょう」
実際、今回の取材中でも数時間前まではほとんどのラックに複数駐輪されていたのに、夕方以降になると帰宅するビジネスマンの利用でステーションが空っぽになっている光景を目撃したほど。また、導入にあたっては、市との連携によりトラム、バスとICカード(PASSCA)を共通化し、市民の利便性を上げたことも寄与しているのでは、という分析もある。では、今回取材した中で、一番簡単で割安なレンタサイクル利用方法を紹介しよう。
1)駅などにあるPASSCA発券機でICカードを発行
2)ウェブサイト(www.cyclocity.jp)にアクセスし、リンクコードをEメールで取得
3)市内15カ所の自転車ステーションの端末にPASSCAをかざし、リンクコードを入力する
以上の3ステップで、すぐにレンタサイクルを利用することが出来るようになる。定期パス(月々500円※PASSCA利用の場合)と7日パス(1000円)が選択できるので、市民はもちろん、観光者にも利用しやすいのではないだろうか。
ステーションの設置間隔はおよそ300m毎。これは、近くのステーションに自転車が無かった場合、もしくは返却しようと思ったステーションのラックが一杯で返却できないという想定を考慮したものだとか。このあたりのノウハウは、ヴェリブ運用実績から得られた独自のノウハウだろう。また、気になる自転車の仕様は、耐久性や対破壊性をクリアするためのヘビーでファットなヨーロッパ仕様に。実際に乗ってみた印象は、思っていたよりスムーズだし、安定感があって心地良かった。また、もともとフラットな富山市内だったら3段変速ギアで十二分に走れる。ラックの使い勝手も、カードさえ持っていれば、ほとんど戸惑わずに操作できる範囲だから、近距離の移動でもストレスなく駐輪〜レンタルが繰り返せて、かなり新感覚な便利さ。また、24時間対応だから、深夜でも自転車でスイスイ帰宅。あー、これ東京にあれば良いのに!!

景観と共存するデザインで都市を活性化させる。

「弊社のポリシーの1つに、『昔からその場所に存在していたかのように設置する』、というものがあります。バイクシェアリングのステーションなどの施設は、同時に都市景観の一部にもなるので、機能はもとより、美しく街にフィットするようにデザインされています。そうすることによって利用者にも快適な施設、さらに広告主にとっても魅力的でクリーンな媒体を提供できるという訳です」
我々の目には、富山市ではじまった自転車を中心とした壮大なテストケースが順調なスタートを切ったかのように写る。ただし、これまでの常識を遥かに超えた自転車と街とのシナジーを、その導入前から正確に予測することはとても難しいと猪爪さんは言う。
「このバイクシェアリングの一番の魅力でもあり、難しいポイントは、正確な需要予測ができないということです。街のいたるところにステーションが設置され、サービスが開始することで、これまでに無かった全く新しい移動や交通が生まれてくることがわかります」
自転車というビークルが街に張り巡らす細かいグリッドが、街の景観や利便性、見えない需要をも掘り起こす。今後、多くの都市がこの“富山モデル”を取り入れていくことを期待していこう。

各ステーションを巡回するメンテナンスサービス車
各ステーションを巡回するメンテナンスサービス車両。時間帯によって自転車数が偏った場合や、定期的にメンテナンスする際に自転車を載せて移動する。

Permalink: http://x2tokyo.jp/connect/82/

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