もともと、1980年代から都市計画に力を入れてきたバルセロナだが、その政策が世界的な注目を集めるようになったのは、やはり1992年のバルセロナオリンピックの成功がきっかけだ。面積97平方キロメートル(東京23区の約6分の1)とコンパクトで高密度な都市であるバルセロナは、1992年以降も伝統の街並を活かしながら交通インフラや旧市街の再生などを推し進め、「バルセロナ・モデル」と呼ばれる都市計画の手本となった。そのバルセロナが最近新たに取り組んでいるのが、自転車の導入だ。
10年前と現在と、その風景を比較してみると、そこには変化が起きていることに気付くだろう。その変化をもたらしたのが「ビシング(bicing)」というコミュニティサイクル。公共交通機関のひとつとして市が2007年に導入したシステムで、現在では約400ステーション約6000台が稼働しており、iPhoneアプリでステーションの検索や状況をチェックもできる優れもの。市内の自転車レーンの整備が進むのと相まって、通勤利用を中心に、バスや地下鉄などの公共交通機関との組み合わせで高い利用率を誇っているし、このビシングだけでなく、市内には民間のレンタサイクルも充実しているという。
「バルセロナの自転車事情の最大の優れた点は、とにかく行政のサポートとプロモーションがすごいこと。市内の自転車レーンは年々その距離を伸ばしているし、そういった整備に伴って自転車人口も増えている。通勤だけでなく、自転車カルチャーとして、BFFが開催されたり、バイクポロや街中レースなどインディペンデントな自転車イベントも盛んになってきました」
と話すのは、バルセロナの「ポスト・カー・シティ」を構想している若き建築家のマーティン・フェルナンデス・アレスさん。昨年東京の自転車シーンをリサーチに訪れ、さまざまな自転車インフルエンサーやX2 TOKYOともミーティングを持った。彼によるとこの自転車ブームを動かし、支えているのはやはり積極的な行政の取り組み。
「だから、バルセロナの自転車乗りには2種類いて、メインはレンタサイクルを使ってほかの交通機関と組み合わせて使う人。もうひとつは、自分の自転車を持っていて基本的には自転車がメインの移動手段である人。若い自転車乗りの中には、ファッションや都市のライフスタイルを象徴するものとして乗っている人が少なくないですね。いずれにせよ、車に代わる交通機関としての自転車政策をきっかけに、いろいろな人がこの街のサイズが自転車に適しているということに気づいたことが大きいと思います」
最近では、市内一の大通りにも自転車をうまく取り入れようという議論が持ち上がっているんだそう。東京もそうなってほしい……とうらやましく思いつつ、マーティンに「今後バルセロナが自転車都市として発展するのに必要なものは?」と聞いてみると、それは「意識」だという答えが返ってきた。
「これだけ好条件が整っていても、バルセロナは自転車都市としてはまだまだだと思います。それは、やはり人々の自転車に対する意識が低いから。自転車を使わないドライバーや歩行者には自転車はまだちゃんと認識されていないし、何より自転車乗り本人の熱意が足りないと思います」
実はビシングも整備不良の自転車がちらほらあったり、登録&パス発行がスムーズにいかなかったりという問題もはらんでいるそう。いうなれば、ハードが整備されたバルセロナ、ソフトが充実している東京といったところ。そんなバルセロナの自転車乗りたちがいかにまだ「自転車熱が低い」かというエピソードを、「可笑しかったのは」と前置きしてマーティンが話してくれた。
「今年は例外的に寒くて雨が多かったんですが、それだけで街中の自転車は激減したんです。クールでかつ機能的な自転車ファッションを持っている東京のライダーと違って、こっちの自転車乗りはいろんな条件に対応する装備も、まだちゃんとしてないのかもしれないですね」
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