10年前にNYでBFFが始まったのは、BFFの創設者が自転車に乗っていてバスと衝突事故を起こしたことがきっかけだった。当時のNYでは、今日のように自転車がポピュラーな移動手段ではなかったため、「貧乏人くさいから自転車なんてもう乗らない方がいいよ」なんて友人に言われたりしたらしい。そう、10年前のNYには、自転車に「市民権」はなかったのだ!
それから10年。2010年のNYで自転車に乗って街を走って驚いたのが、バイクレーンが急激に伸びているということ。去年も同じ時期にNYを走っているから、体感的に対昨年とは全然違う! 無料で配布されているNYC Cycling Map 2010を開くと、マンハッタン島の川沿いのサイクリング専用道路だけでなく、ロウアーマンハッタンを中心にメジャーな道路にバイクレーンが続々と増えており、現在建設を予定されているものも多数。バイクレーンだけを走ってマンハッタン中を快適に動くことができるようになるのも時間の問題なのかもしれない。
信号を越えるとバイクレーンが途切れていたり、一方通行の道が多いマンハッタンでは、あるストリートでは左側にあるバイクレーンが他のストリートでは右側にあったり、なかなか面白いことになっている。設置初期にはバイクレーンに駐車されてしまって、バイクレーンを走行する方がかえって危なかった時期もあるらしい。いまでは随時改良されているらしいが、ひょっとしたらそういった「改良中」であることがバイクレーンがまっすぐつながっていない理由のひとつかもしれない。まだまだ進化中なのだ。
東京と違い一方通行が多く、碁盤の目のように道が走るNYは、走り勝手が随分と違うので馴れが必要。左側にあるバイクレーンから右折するタイミングが難しかったり、曲がりたかった道が一方通行のため1ブロック先まで行ってぐるりと回りこんだり……。とはいえ、バイクレーンを走っている分には、クラクションを鳴らされることもなく、自分のペースで走ることできるのはやっぱりいい。
いいなぁ、東京も早くこんなバイクレーンができないかなぁ、と思った方。NYのバイクレーンは気がついたら行政が作ってくれていた、というわけではない。アメリカは日本に比べて市民活動が活発で、様々な団体がボランティアや寄付などを募り、生活向上のための活動を行っており、自転車を取り巻く環境の向上と自転車に乗る人への啓蒙活動を目的として活動している団体もあるのだ。そういった努力や活動が、乗る人にも乗らない人にも優しいバイクレーンの敷設に大いに結びついていることを忘れてはならない。
たとえば「Time’s Up(http://times-up.org/)」はNYで環境問題に取り組む団体で、20年以上にわたり都市の移動手段における自転車の優位性を、様々なプログラムを通して啓蒙している。2004年にNYのクリティカルマス(自転車で行うデモ的集団走行)で、自転車に乗っているというだけで200名を超える逮捕者が出た事件(http://www.stillweridethemovie.com/)では、逮捕者の釈放に向けて奔走するなど、今日のNYのバイクコミュニティを語る上では欠かせない存在だ。メンバーからの会費とボランティアで運営されるこの組織には、NYのメッセンジャー達も多数協力している。
去年のBFF東京でも上映された「The Third Wheel(http://www.thethirdwheeldocumentary.com/)」では、NYで急増した自転車タクシーに対する規制が市議会で審議されることとなり、自転車タクシーを始めた起業家たちが車社会アメリカの自動車産業のロビイストに囲われた議員と対峙した必死の攻防が、ドキュメンタリーで記録されていた。そう、NYの自転車乗りたちは、行動するアクティビストでもあるのだ!
美しいブルックリンブリッジを自転車で渡りながら、ふと東京のことを考えていた。街中には自転車が増えて、雑誌やウェブ、イベントでも、自転車っていうキーワードが溢れかえっている。でも……。東京はまだ本気で自転車で立ち上がろうとしていないように感じて、目の前に広がるマンハッタンを眺めていた。
(text & photo: Harumi Suzuki)
● BFF
http://www.bicyclefilmfestival.com
● NY市/バイクマップ
http://www.nyc.gov/html/dot/html/bicyclists/
bikemaps.shtml
● マンハッタンリキシャ(自転車タクシー)
http://www.manhattanrickshaw.com/
● トランスポーテーション・オルタナティブス(自転車移動の優位性を訴えるNYの市民団体)
http://www.transalt.org/
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