7月某日。明和電機のアトリエでは、日本科学未来館での展覧会「ノック!ミュージックーー打楽器からコンピューターに至る4つの進化論ーー」(〜10/11まで開催中)のための制作と、バルセロナで開催される「GREC2010 Festival de Barcelona」(7/10, /11に開催)でのライブに向けた楽器制作&整備のため、急ピッチで作業がすすめられていた。
そんな殺気立ったアトリエで、土佐社長は静かに「チャリ楽器」構想を語り始めた。
チャリ楽器とは何か。どのような楽器になるのか。
ーーチャリ楽器、具体的にはどのような楽器になるのでしょうか?
「フランク・ザッパがやっていたような直感的に自転車をたたいて音を出すのではなく、もう少し制御、コントロールされた音楽ができるものですね。打ち込みみたいな……でも、こぐ」
ーーデジタル楽器だけど人力がエネルギー。アナログなデジタル楽器、とでもいいましょうか。
「そうですね……うん。人間がこいでる、体力の続くかぎりしか演奏できない。そういう制限があるのがよいですね。なんでもできるのではなく、制限されることで発想が生まれるわけです」
ーーそういう楽器でどんな音楽を?
「うーん、ポップソングでは、ないですね。3分とかの音楽じゃない。もっとこう壮大な……ラヴェルのボレロのような」
ーー音が重なってゆくような。
「そうですね」
実は明和電機の近年の名作「WAHHA GO GO!!」と「チャリ楽器」には関連がある。手で回転盤を回してその動力をもとに笑い声を発するWAHHA、そして手で回す変わりに足でこぐチャリ楽器。チャリ楽器は明和的なノウハウがつまった楽器になりそうだ。


インタビューから数週間後、大成功でバルセロナのライブを終え、暑さ増す東京に戻った明和電機・土佐社長と、チャリ楽器の具体的な設計に入るために、ブリヂストンサイクルの工場見学へ向かった。ブリヂストンサイクル上尾工場。ここは国産自転車のほとんどを生産し、また、世界にも類を見ない「ママチャリからプロ用スポーツバイクまで」を手がける。この工場は、明和電機のクリエーションにどんな刺激を与えることになるのかーー。
社長を最も驚かせたのは、「工場」でありながら、職人の手による数々の作業が行なわれていること。量産の部分もたくさんあるのだが、溶接や塗装、組み上げなど、そこここに人間の手作業がはいり、各セクションに熟練の職人がいる。
「工場だと思って来たら、これは工房ですね」とうなる社長。明和電機のアトリエとも通ずるところがあるのでは?と訊ねると「同じニオイがしますね!」。自転車と明和電機が意外と深い関係にあることは前回のインタビュー(http://x2tokyo.jp/inside/interview_meiwadenk/)にも明らかになっていたが、自転車工場と明和電機のアトリエにもなにか同じものが流れているようだ。
ママチャリのアセンブル、フレーム制作、スポーツバイクの溶接や塗装、そして製品の安全と安心のための製品試験場と広い工場をくまなく見学し、「感動した!」と興奮の面持ちで工場をあとにした社長。
「近日、チャリ楽器のデッサンを描き、設計図に着手します!」
と高らかに宣言し、社食(この日のメニューはカレー)へと向かったのでした。近く、みなさんにチャリ楽器のイメージをお知らせできる……かもしれません。お楽しみに。
(text & photo: X2 TOKYO Project)